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【野々市】「使う芸術」としての工芸――第72回日本伝統工芸展と石川県の人間国宝たち

  • 執筆者の写真: 中村せせらぎ
    中村せせらぎ
  • 8月21日
  • 読了時間: 3分

8月21日(木)今年も、心待ちにしていた季節がやってきます。「第72回日本伝統工芸展」第72回日本伝統工芸展-公益社団法人日本工芸会が、9月3日(水)から東京・日本橋三越本店を皮切りに、全国10会場で開催されます。金沢では、10月31日(金)から石川県立美術館にて開催予定です

この工芸展は、1954年(昭和29年)に第1回が同じく日本橋三越本店で始まりました。主催する公益社団法人日本工芸会は、重要無形文化財保持者(いわゆる人間国宝)を中心に、全国の伝統工芸作家・技術者約1,200名が所属する団体です。

私自身、毎年この展覧会での作品を堪能しています。工芸品は「見る芸術」であると同時に、「使う芸術」としての美しさと機能性を兼ね備えています。日々の暮らしの中で、手に触れ、使い込むことで深まる味わい、それこそが、工芸の魅力だと感じています。

前職の北陸朝日放送では、国立工芸館(国立工芸館 | 独立行政法人国立美術館)に所蔵された作品を紹介する番組『デジタルミュージアム ~清らなる工芸~』の放送前チェックを担当していました。制作の背景や技法の奥深さに触れるたび、石川の工芸文化の豊かさに改めて感動したことを思い出します。

石川県には、伝統工芸の分野で現在11名の人間国宝の方々がいらっしゃいます。

小森邦衞さん(髹漆)、吉田美統さん(釉裏金彩)、川北良造さん(木工芸)は、山中漆器の木地づくりにおいて高い評価を受けています。中川衛さん(彫金)、魚住為楽さん(三代魚住安彦)(銅鑼)は金沢市出身の銅鑼づくりの名匠として選ばれました。

前史雄さん(沈金)は、漆芸の沈金技法において卓越した技術を持ち、中野孝一さん(蒔絵)が蒔絵の繊細な表現で認定され、野々市市の私のお隣の町にお住まいです。二塚長生さん(友禅)は、加賀友禅の染織技法を極めた方です。山岸一男さん(沈金)は、沈金・沈黒・沈金象嵌など多彩な技法で認定されました。

 西勝廣さん(沈金)は、輪島市の沈金職人として、令和6年(2024年)10月に人間国宝に認定されました。これは、令和6年能登半島地震(2024年1月1日)後のことです。

西さんは震災後も沈金の制作を続け、被災した工房の中でも創作を絶やさず、技術と精神の両面で高く評価されての認定となりました。報道でも「工房が被災しても作品づくりを続けた」と紹介されており、輪島塗の再生に向けた象徴的な存在として注目されています。

この認定は、石川県の工芸文化にとって希望の光であり、震災からの復興に芸術が果たす力を示すものでもあります。西さんの作品には、花や自然を題材にした繊細な意匠が多く、沈金の点彫り技法を駆使した立体的な表現が特徴です。

そして2025年7月に中田一於さん(釉下彩)が九谷焼の釉下彩技法で人間国宝に答申されました。これにより、石川県在住の人間国宝は過去最多の11名。

石川県は、人口比で見ても、全国屈指の工芸技術の集積地であり、まさに「工芸王国」と呼ぶにふさわしい地域です。

このような方々の技術と精神が、石川の文化を支え、未来へとつないでくださっています。工芸の奥深さが、日常の感性を豊かにしてくれます。

石川の文化の力を、これからも市民の皆さまとともに育んでいきたいと思います。

 
 
 

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